民事信託の仕組み
民事信託は、商事信託と異なり、低コストで法令さえ守れば確実な信託として、例え規模が小さくても、有効に機能する新時代の事業承継対策の一つです。ここでは中小企業(主に小規模起業)を想定した「事業承継」を想定しています。
仕組みとしては、次の①②➂の人(者)が、登場人物(プレーヤー)です。それでは①委託者、②受託者、➂受益者の各役割を説明しましょう。
① 委託者
あなたです。
中小企業の創業者が、事業(会社の財産・負債)を、次世代(子など)に引き継ぐ場合、あなたがその事業を、次の②の受託者に信託する話です。
信託とは「信じて託す」と良く言われますが、それでは何のことか分かりません。財産を「預ける」と言うと「預託する」という話になり、信託とは違います。しかし「資産が移転する」というニュアンス でいうと似ています。
ここではその程度に理解すればよいでしょう。
② 受託者
受託会社です。商事信託では信託銀行です。
しかしここでは、小規模で低コストの信託をイメージしてお話しています。実務的には信託銀行と「誰でもよい個人」の中間に、信託会社(金融庁監督下にあるレッキとした金融機関)が、実務に当たる場 合が多いです。
その受託者の職責は、委託者(あなた)の会社の財産等を預かる(信託受託)する人(者)です。事務管理をするいわば「お世話人」です。
儲かるというイメージはありません。どちらかというと報酬ももらっても良いですが、管理費でその相場は、年20~30万円程度です。
ですから報酬対受託の重さを考えると「お世話で大変」という感じです。
法律上は、誰でもよいです。
あなたが一般社団法人または一般財団法人を設立して、その法人を受託者にすることも実務上、行われています。
➂ 受益者
信託契約としては受益者はただ契約に記載されるだけ。契約には参加しません。「得」な立場の人です。受益する、つまり委託者(あなた)が委託者(信託会社)に委託した信託財産から生じる利益を、 受け取る人です。
あなた(委託者)は、受益者を変える(契約上で変更する)ことができます。
当初の事業戦略として、あなたが受益者を『あなた自身』に設定できます。
あなたの事業(財産)を、モノ(物権)と受益権(債権)に分け、物件部分を委託者(信託会社、又はあなたが作る一般財団法人等)に信託譲渡します。
何もやっていないときと結果的には同じです。
しかしあなた(委託者)は、例えば「死んだら」その受益権を、再婚の妻に与える旨を契約に盛り込むことができます。
そしてその再婚の妻が死んだら、残りの財産を、あなたの長男に渡せ(受益権を与える)と指定できるのです。
その指定は法律により守られます。つまり受託者は、忠実にその遺言とは似て非なる「信託契約」により、あなたの指定を実行しなければなりません。
それは受託者が法律でそうしなければならないということです。つまりあなたの信託契約は、法により確実に守られることになります。