信託のメリット・デメリット

民事信託の長所と短所

1.長所
  民事信託の長所は次の点です。


 ⑴ 争続(相続争い)の遮断
   信託契約による「財産の管理」は、信託法により、受託者(信託会社等)が粛々と実施し、もはや感情的な争いは遮断されます。


    ※ 遺留分の減殺請求の遮断は不可。
      信託会社ではそのようなリスクのある信託契約は受付段階でチェックしています。


 ⑵ 社長意思の実行
   社長の考え(事業承継の方針)の確実な実施。信託法がその実行を保証します。


    ※ 信託契約は、遺言よりは、確実な「実施」が期待できます。
     もっとも実務上は、信託契約時に、遺言書(公正証書)も書いて戴く手続きになっています。


 ⑶ 世代を超えた事業承継
   遺言では不可能な第二次相続・第三次相続の「社長方針」が、信託契約では、強制力をもちます。
   法定相続の域を超えた「事業承継」「財産承継」が可能です。


    ※ 法定相続は各々第二次・第三次の被相続人の遺産が対象。
     各々の相続で法定相続人以外に「社長指定」した遺産の行方に対しては「法定相続外の遺贈」となる。


      ㋑ 遺留分の減殺請求は遮断できない
      ㋺ 法定相続人以外の遺贈については相続税が20%割り増し加算される

2.短所
  民事信託の短所は、「相続税の節約(節税)」には、原則としてつながらないということです。

  また商事信託(信託会社を使った信託契約)では、信託コストが問題になります。

民事信託と商事信託の違い
 

  民事信託 商事信託
受託者 「だれでも可能」
 実務では、特に不動産を伴う場合は「信託会社」が対応します。
㋑ 信託会社
 金融庁監督下の信託専門 の会社(銀行ではない)
㋺ 別会社(一般社団・財 団法人)
㋺ 親族のだれか
㋩ 親権者、または成年後 見人
信託銀行











信託コスト 原則として
 年20万円~30万円
(成年後見人の法定報酬程 度)
⑴設定時
 受託資産の10%
⑵年次管理費
 受託資産の収益の10 %
後見人 身障者または認知症患者には、任意後見人または法定後見人が付きます。
身寄りがない場合は市区町村長が裁判所に依頼して法定後見人を指名してもらいます
信託契約について、各信託銀行の内規に従って後見人等が必要な場合は法令にしたがいます